「和菓子」が人の想いを繋ぐ。
※読書記録1冊目(2015/10/11-10/15)
私は食べ物の出てくる物語が大好きです。
テレビだと「孤独のグルメ」「深夜食堂」「サラメシ」は欠かさず見ていて、いつも夜中にお腹を空かせています。
今回は「和菓子のアンソロジー」を読んでみました。
「空の春告鳥」坂木司、「トマどら」日明恩、「チチとクズの国」牧野修、「迷宮の松露」近藤史恵、「融雪」柴田よしき、「糖質な彼女」木地雅映子、「時じくの実の宮古へ」小川一水、「古入道きたりて」恒川光太郎、「しりとり」北川薫、「甘き織姫」畠中恵の10篇が収録されています。
●「空の春告鳥」坂木司
「和菓子のアン」の続編だそうですが、ごめんなさい、本編読んだことないです。
舞台が和菓子屋さんということもあって、和菓子感が一番ありました。
『飴細工の鳥』
自分は「飴細工の鳥」になっていないか?いや、「飴細工の鳥」にすらなれていないのではないか?
常に心のどこかに据えておきたいですね。
●「トマどら」日明恩
まさかの刑事ものです。あぁ、私も行きつけの店、お気に入りの一品見つけたいです。
私に兄弟がいたらもっと感情移入できたのかもしれないですね。
●「チチとクズの国」牧野修
前半と後半の世界観が全く違っていて不思議な物語です。二番目に好きです。
主人公の父に対する感情は共感できる部分もあって、途中読むのが少し辛かったです。
水まんじゅうの表現がすごく美しくて、私もあの世に引き込まれました。
●「迷宮の松露」近藤史恵
モロッコという異文化の地での和菓子、異色だけど似ている…気になる気になる気になる。
松露もデーツのお菓子も食べてみたいです。
ちなみに、個人的に一番読むのが辛かったお話です。でも、一番好きです。
何故辛かったかというと、あまりにも自分とリンクしていたからです。
私は自分が作り上げた理想像に縛られていたのだ、とはっとしました。
●「融雪」柴田よしき
寒い北国と暖かい人々のお話です。
とにかく料理やお菓子の表現が美味しそうで魅力的です。
●「糖質な彼女」木地雅映子
ごめんなさい、あまり入り込めませんでした。
いや、脳内で映像は流れているんですが、どうも「こなし」が話に馴染んでないような印象をうけてしまいました。
「和菓子とは」何なんでしょうね。
後半の展開には虚しくなってしまいました。
和菓子に限らないと思いますが、「美味しい」というのは味だけでなく見た目や器、そして想いがあるからこそ感じるのではないでしょうか。
私たちも気づかないうちに自分にとっての「宮古」を探し続けているのかもしれないですね。
●「古入道きたりて」恒川光太郎
前述の通り、 「美味しいもの」ってそんなものだよなぁ、と思いました。
世界観に入り込みやすく、情景の描写が美しいからなのかなと思います。
●「しりとり」北村薫
これはもう、素敵としか言えないのですが。三番目に好きです。
一見俳句の体を成していない、愛する人が残した俳句。
謎が解けた瞬間泣いてしまいました。
●「甘き織姫」畠中恵
ほんまにこんな人たちおるんかいな、という思いが最後まで拭えなかったのが残念です。
でも、和菓子に想いを込めて贈ることは素敵だと思うし、和菓子のことをもっと知りたいと思いました。
全体を通して、こんな切り口もあるのかという驚きが大きかったです。
「和菓子」をテーマにした小説というと、「空の春告鳥」のようなお話がスタンダードのように思うのですが、特に中盤の作品は異世界のようで、これが小説の面白さなのでしょうね。
読書記録、これからも自分のペースで続けていきたいと思います。